技術書レビュー『これからはじめるReact実践入門』 | 技術書 | みどりのウェブ開発日記

技術書レビュー『これからはじめるReact実践入門』

カテゴリ: 技術書

記事投稿日: 2023年10月18日



この記事は、WINGS プロジェクト様のレビュー企画に応募し、書籍献本を受けて作成しました。

 この書籍の対象読者

以下の読者が対象となるでしょう。

  • JavaScript の基本学習が終わった人
  • React がはじめての人
  • React 実践の教科書」などの、React の入門書をやりきった人
  • React を学びかけて断念した人

上記の方々は、この本の目次をざっと見ただけでも、「React の学習を絶対に成功させる」という意気込みが感じられるでしょう。

jQuery までの理解で終わっている人でも、「モダン JavaScript」の理解から学ぶことができ、サーバでのデプロイの仕方からルーティング、そして Next.js の理解まで問題なく進められることが分かるからです。


本書が扱う情報

React の本といっても、そもそも学習範囲が広く、私も満足のいく本にはなかなか出会えませんでした
だいたい、以下のように、どうしても、中途半端になりがちなのです。

  • React の基本は徹底しているが、ルーティングやフレームワークである Next.js は扱わない
  • React と Next.js を網羅すると謳っているが、どちらも中途半端かつ、サンプルプログラムにバグがあって動かない

おそらくこの本に興味がある方は、上記に多少なり、心当たりがあると思います。
実際、私はちょうど、React の基本学習を以下の本で終えたところでした。

こちらの本は、React 学習をはじめた人が迷わないよう工夫がこらしてあります。それが、「モダン JavaScript の理解と学習」です。

いざ React の勉強をはじめた時、つまづきそうなポイントを細かに解説してくれています(まったく無駄がないので、一言一句、丁寧に読むことをおすすめします)。
しかし、React の基本学習に失敗しないことを追求しているため、ルーティングや Next.js の解説は、こちらはあえて、省いてあります。それは納得できますし、実際、理解できました。

私は『モダンJavaScriptの基本から始める React実践の教科書』のように、信頼性が高く、現場での運用理解からこと細かに、さらなる応用に進んでいける本はないか、と考えていたところ、今回の献本を受けられました。
まさに渡りに船、僥倖でした。


目次=ロードマップ

「学習コスト」の面からいうと、React は 結局、JavaScript なので、それぞれを細かく見ていければ、難易度は小~中程度です。
しかし、覚える範囲が広い、というのが最大の難関です。

そこで、本書の目次を見て下さい。
※各章(Chapter)のみ。詳細はこちらから

Chapter 1 イントロダクション
Chapter 2 Reactの基本
Chapter 3 コンポーネント開発(基本)
Chapter 4 コンポーネント開発(フォーム)
Chapter 5 コンポーネント開発(応用)
Chapter 6 Reactライブラリの活用
Chapter 7 フックの活用
Chapter 8 ルーティング
Chapter 9 テスト
Chapter 10 TypeScriptの活用
Chapter 11 Next.jsの活用

React の基本を終わった私にとっては「ルーティング、Next.js の説明がちゃんとある!」というだけで結構、興奮しました。
しかも、Chapter  1-3 は「モダン JavaScript  の基本」があり、初学者が失敗しないためのステップがちゃんと用意されています。

少し見方を変えると、
Chapter 2 までで、基本編。
4・5・6で、コンポーネント編。
6・7・8・9で実践編。
と区切りを入れて、進めることができるでしょう。

覚える範囲が広いと、自分がどのあたりを進んでいるのか? 本当に実践で役に立てるのか? とうんざりしそうになりますが、実際にこんな風に使っていくんだ、という手ごたえを確認しながら進められる。
つまり、ただ知識を網羅した解説書ではなく、目次から戦略の練られたロードマップであり、実践的な教科書といえます。

これまで React を学習しようとして取り組まれた方なら、おそらくこの目次を読んで、さまざまな疑問点、わだかまりが解消できると分かり、すぐに購入を検討されるでしょう。

まさに一から十までおさえた本当の React( +Next.js )の教科書。
これ一冊、手元にあれば、React 学習は充分です。


著者紹介

今や、誰でも出版できる時代。Amazon Kindle unlimited などでも React の本は山ほどありますが、技術者たるもの、誰もが本音は、きちんとした実績のある著者と編集者とが作成した立派な「書籍」で勉強したいもの
本書は、「山田 祥寛」さんの手によるものです。ウェブからアプリ開発、PHP や Python といった言語の詳解本まで、幅広く上梓されています。

私もウェブのプログラマとして、以下の3冊を購入済みです。

『JavaScript本格入門 ~モダンスタイルによる基礎から現場での応用まで』

『独習PHP 第4版』

 

独習Python

どの本も「これ一冊あれば安心」と思えるのが、特徴かも知れません。


セキュリティ面でも丁寧な解説

プログラマの初学者と、玄人との違いは、エラーを読み解けることもそうですが、セキュリティを担保し、考えられているか、という点があります

たとえば、本書の「2-3-2 JSX に JavaScript 式を埋め込む – {…} 構文」では、JavaScript おけるクロスサイトスクリプティング(XSS)の脆弱性についての解説があります。

  1. React では、式によるテキストの埋め込みにも、(デフォルトで)セキュリティ的な配慮がなされている
  2. dangerouslySetInnerHTML 属性を使えば動的に HTML 文字列を生成することも可能である

ウェブで使うシステムである以上、さまざまな攻撃は、ある、と考えてつくるのが常識です。
React がきちんと考えられたライブラリであり、そこを漏らさずに解説されていることがよく分かる章でした。
※セキュリティのことを考慮して解説すると本筋から外れやすいので、基本だけを書いた本だとよくスキップされがちな内容ですが、本書は安心です。


図表の充実、飽きない長さ

この点、本当に感謝なのですが、ほとんどの章で何かしらの図表があり、また、ひとつの章が数ページで構成されています
これが、分かりやすいし、進めやすい。

最初に、React は学習範囲が広いのが難関、と述べました。
「どんなに大きなタスクも分割して小さくすれば対応しやすい」というタスク管理の鉄則を本書は貫いており、「1日◯章、進めてみようか」という学習計画も立てやすい。

教科書、と述べたのも、図表が多く、処理や仕組みが理解しやすくなっているからです(オライリーの「Head First」との日本版とはいいませんが、『脳が飽きない』ように、よく作られているという点では、共通していると思いました)。

「図表が多くて、センテンスが短いから読みやすいよ」と、人にも明確に紹介しやすい本です。


1点、おしい点

「シングルページアプリケーション」(SPA)でつまずくポイントとして、「本番反映」という工程があると思います。
つまり、本に掲載されている開発環境では動くけれども、レンタルサーバだったり、クラウドの本番環境で公開する方法について、意外とちゃんと解説している本が少ないのです。

本書では、最初からビルドコマンドで生成したフォルダの中身を公開する方法が書かれており、安心できます。

ただ、「React Router アプリを本番環境に移行する場合」というコラムでは、Apache サーバでの追加の設定については書かれているのですが、Apache とならぶウェブサーバである Nginx での設定は紹介されていませんでした。

Apache で出来るなら、Nginx でも出来ることは疑いなく、ウェブ検索すればいいと思いますが、せっかくここまで書いてくれたのだから…と、ちょっと物足りなさを感じました。


息抜きのコラムもうれしい

私は、こういう技術書の「コラム」がけっこう楽しみです。
著者の実体験や、業界のトレンドが知れたりするからです。

本書では、ウェブや JavaScript の初心者向けに「識別子の記法」、「npm のサブコマンド」などのコラムが挿入されています。
ある程度、慣れている人でも、「こういうのがまとまっていると助かる」という実践的な内容です。


総評

技術書として、大変読み進めやすく、最初に環境のバージョンやエディタの使い方も丁寧に解説されているため、失敗しにくい本であることは間違いありません。

苦手な分野だと、往々にして、解説書も好きになれないのですが、本書は React のとっつきにくさを払拭してくれました(これだけでも嬉しいかぎりです!)。

私がこの本を知ったのは、前にも述べたように、「React 実践の教科書」をやり終わったところでした。
その中で、『この本では(基本を理解することを目的としているため)詳しくは述べませんが、こういう技術がありますよ』と短めに紹介されていた、「MUI」「Storybook」「React Router」が本書に載っていると知って、本当に驚きました。
続けてこのまま、この本で react を深く学べるぞ、と思った次第です。

この本一冊だけでも充分だと思いますが、もし最初につまづくようでしたら、初学者の方は「React 実践の教科書」を開き、基本をじっくり学んでから、本書に戻ってくる。そんな使い方も出来ると思います。
私も本書とは、最初のうちはそんな付き合い方になりそうです。

最後になりましたが、本書をレビューする機会を与えてくださった「WINGS プロジェクト」様にお礼を申し上げます。ありがとうございました。








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