D・W・ジョーンズ作「時の町の伝説」はウェアラブル・コンピュータのお話?

ダイアナ・ウィン・ジョーンズといえば、
「ハウルの動く城」の原作者(和書名『魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉
』)、といえば、日本ではうなずかれる人が
多いと思います。イギリスを代表するファンタジー作家の一人で、
特に「魔法」、「異世界」、「パラレルワールド」をテーマにした作品に
優れたものが多いことで知られています。

代表作のひとつ「クレストマンシー」シリーズは全作品読みましたが、
もうすぐ40になりそうな大人が読んでも面白い。
映画化になっていないのが不思議なくらいです。
ありとあらゆる世界を簡単に行き来し、呪文を唱えることもなく
大きな力を使える「大魔法使い」たちの物語。この設定を聞いただけでも
ワクワクしてしまいます。

さて、「時の町の伝説」は、初期の頃の作品で、出版されたのは1987年。
主人公は1939年、第1次世界大戦のさなかにあるイギリスから
田舎に疎開する少女なのですが、「時の町」で身に付けることになる、
とあるベルト。
これがなんとも…「ウェアラブルコンピュータ」ではないか! と驚いた次第です。
ボタンを押すと、手のひらに光る時計があらわれたり、
お店でお金として使える「クレジット」の残高が現れたりします。
また、メガネなしに焦点を合わせてくれたり、懐中電灯がわりに
あたりを照らしてくれたり、はては軽量化機能というもので、体を軽くして
移動を簡単にしてくれたり。

1960年台~70年台の SF を読むと、2000年代の科学は
まだ当時の人々の想像(イマジネーション)の範疇でしかないんだ…と
唖然となります。インターネットがない時代の方が、人々は
想像力が豊かだったのかな、とそんな気もしてきます。

まだ読んでいる最中ですが、このお話はどちらかといえば、
いつものジョーンズ氏の「魔法」ではなく、「SF」に近いので、
少し調子が違いますが、「今」、現代だからこそ読んでみると
面白い要素を発見しました。

ジュール・ベルヌが潜水艦や原子爆弾、月ロケットなど、
あらゆる科学の進歩を見越してSFを書いたのに通じるものを感じた次第です。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「魔法使いはだれだ」を読んで

昨年末に「魔法使いハウルと火の悪魔」を読んでからというもの、
すっかりダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品にはまってしまいました。

これまで、ハウルの続編と、大魔法使いクレストマンシーの作品を2作、
そして短編集を読んできて分かったのは、ジョーンズは
パラレルワールドを描く作家だ、ということです。

不思議なことに、ウィキペディアで「平行世界」を読んでみると、
パラレルワールドを扱った作品を紹介するリストの中に、
ジョーンズの作品は見当たりません。意外です。
ほとんどが、SFです。
私の好きなスティーヴン・キングの代表作「ダーク・タワー」もありません。
ウィキペディアに投稿する人は、SFファンが多いのか、
はたまたファンタジーで描かれるパラレルワールドは、
扱いが低いのか?

ジョーンズの描く、魔法と数々のパラレルワールドは
本当に魅力的です。ハウルにしても…(ネタばれになるので書きませんが)、
まさか、あんな意外な身の上だったとは…。
スタジオジブリの映画は、原作の魅力の半分くらいと言ってもいいと思います。
映画の後半は、監督の創作になっていたと分かりました。
私は、映画より、もっと頑固な性格の、原作のソフィーの方が好きです。

先日、電車で帰宅していた時のことですが、ジョーンズの本を読んでいたら、
「大変失礼なのですが…」と隣に座っていた男性が声をかけてきました。
きちんとした髪型の人で、手には何かの楽譜を持っていたので、
音楽家か、あるいは先生だったのかも。何だろうと思って目を上げると、
「お読みになっている本のタイトルを教えていただけませんか?」と
彼は言いました。
学生の頃から長く、電車通学・通勤で本を読んできましたが、
そんなことを言われたのは初めてでした。
横目でちらっと読んだだけでもよっぽど面白かったのでしょうか。
本の最初のページを見せてあげると、ちょうど降りる駅に着いたので、
理由を聞く暇もなく、私は電車を出ました。
あの人もジョーンズにはまったのでしょうか。

昨年は、「ゲド戦記」にはまり、外伝以外はすべて読んでしまい、
また面白い本に出会えるかなと心配していましたが、
ジョーンズに出会うことができ、これから先、数か月は楽しく
過ごせそうです。
読書の楽しみはつきません。